kutta

たまに

ハッチが開く

 


いつかオススメされた少し昔の、あの頃は最新だったアニメを観ている。

ドラマでも何でも「毎週欠かさず観る」という行為が苦手で、思い返してもそのペースで完走出来たのは記憶だとたぶん7年前くらいが最後。
今 週に2話ほどのスピードで喜んで観れているのはストリーミングだからなのと、当時何となく背を押してもらえたうれしさがスパイスのように、何周遅れで詳細も思い出せないほど奥底で干されていたおかげでしがんでもしがんでも都合の良い風味がするから。
タイミングを合わせる様に、街中に出るとふいに懐かしい曲が聴こえてきて 繰り返しサブスクで再生する。相まって脳が混濁しひりひりし続ける。

しばらく後に携帯を見ると、離れたところに住む歳の離れた友人が踏み込みたい相手との関係性について相談を持ち掛けてくれていた。
少しノスタルジーに浸っていたタイミングだったので妙に生々しく、さも隣でしばらく過ごしたかのような錯覚を覚える。
おそらく社会としての答えを欲して問いかけてくれていて、自分の経験をうまく擦って・近付けて伝えられるやろうかと穿ってしまったけど、この瞬間に対して誠実じゃないなとすぐに修正した。
まだ熱の高さですぐどうこう出来る状態ではなさそうだったので、聞いてなぞってを繰り返して背をさする感覚で返事を打つ。

友人と近い年代の当時の自分は、「誰かと密にいたい」と「じっくりとひとりでいたい」を行き交う中で摩耗して、それを【どっちかはっきりしない情けなさ】とあたりを付けて落ち込んでいたけど
両立する事実を認めないと続かない と何となく気付いて・諦めて、ぬるぬると自立に向かっていったような気がする。
きっとそれは近々行き着く可能性の高いひとつのチェックポイントだと思うので、声高に強調せずに予告だけでいいのかも。個人の感想まで誘導してはいけない。

目を瞑るだけだとしばらく経ってからのそれの束にまた押し出され丸々見失うので、この後の一歩は確立された一歩だと信じる為に、少しでいいから自分なりの結末を見出さないといけないんだよなと感じる。
腹の底で唱えた後にまだまだ自信が欲しい・足りない自分自身が透けて見え、気が引き締まった。


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その想いがまだうまく溶け切っていない状態で人と会う日が来て、頭が少し傾いた様な自分で大丈夫やろうかと少し不安になったまま向かう。

大雑把な予定で、当日の昼過ぎに集合時間の目安を立てただけの気の置けない相手との会なので 集合駅に近付きながら「いつも」のチューニングに自然に合わさり、足が止まった際には一旦仕上がっていたと思う。
ただ多国籍料理を食べ銭湯に行きサウナにも入り、ひとつこなす毎にどんどんと解れ、終いには湯上りで上振れしたテンションをアイスを食べながら離れた駅まで歩いて整えている最中に、そのまま今抱えている自身のそれぞれを話してしまった。

いつも誰にでも自分事は事後報告で、頭の中を占めている範囲がある程度のサイズになると一ミリも溢さなくなる。
持ちかけることに慣れていないというよりも選択肢がないと言ったほうが近くて、だれかにそれを指摘されてさみしくさせてしまわない限りは自然と抱えては考え込む。
少なくとも思春期の頃には「これが一番癒されるスピードが速いな」と感じていた気がする。

話す際は誇張も卑下もなるべくしないようにと念じるので、となると誤魔化しもポリシーに少し反してしまう。
そうすると「言わない」が手っ取り早いので 気持ちを作りながらの作業になると他者を呼ばなくなり、数少ない招いた場面も 申し訳ないが【依頼】され【開示】したという感触だった。溢したことは記憶にない。
大人になる程減っていくゼロイチの瞬間が今起きたのかもと思い、照れつつはにかんでしまう。
いつもと変わらず決して否定はせず、ただ迎合もしない様にひとつずつ言葉を選別してくれていたのが見て取れて、ああこの時間は負担やプレッシャーといった類いではないのかも と。

「言わない優しさ」を認めて欲しいと言うと押し付けみたいで勝手に癪に触っていたけど、この日はシンプルに「そうあるべきだ」と感じた。
棘のような、鬱憤を纏ったプライドを捨てなければいけない訳でも棘のディテールを褒めなければいけない訳でもなく、そうある2人だから共存出来たことを讃えなければ。一緒に戸惑ったり検討することに徹したときに掛かり始めるエンジンもあったのだ。
一人の時間の尊さを誰かに説くという勝手で矛盾した行為は、ある意味緩やかな鼓舞なのかもしれない。



見据える先は後付けでいいから、まずは心身を温める何かに触れることが大事で。
そして誰もどの答えも知らないという事実をうっすら分かっている そのことを体力に任せて認めるとより一層、誰かの何かを横切ることに真剣になれるんだと思う。
交われなさは孤独では全くなくて、進化のためのプロセスで 誰かに話してもいい。

きっと勝手に潜り過ぎて本題からは逸れてしまっているけど、上手く噛み砕いて、このニュアンスを削がずに伝えられれば。
そして気持ちの整理が遅くなってしまったとしても嘘にはならないので、無理はしないでねと願う。

 

 

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